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妖精たちとマティーの契約
『けいやくだよ、マティー』
ルナと繋がった妖精たちが催促をする。
「マティー、妖精たちと契約して」
「なにを言っているの? 」
「聞いて。何か妖精たちを許して、願い事を叶えるように契約して……! 」
ルナとマティーの周りが無音になる。火の海に巻かれているのに、マティーは息が出来る。熱くない。舞う火の粉をかき回す様にルナの周りを旋回する無数の何か……。
「許して……? 」
わたしたち
しちゃいけないことをした
ひととくらして
のやまをはたけを
めぐみをはぐくんでいた
でも
おうさまは
わたしたちのちからを
せんそうにつかった
かみさまはおこった
ひとのあらそいごとに
ちからをつかったから
わたしたちをひとから
みえなくした
きこえなくした
でも
ゆるしてくれたら
かなえてあげるよ
ゆるして
もうわるいことしないよ
妖精たちの言葉をマティーに伝えると、マティーはため息を漏らした。
「マティー? 」
ルナは不安そうにマティーの目を覗きこんだ。マティーはルナと見つめ合った。
「冗談じゃないのね」
「そう」
マティーは手に抱えたワインに目をやると試す様に提案をする。
「このホテルにいる人たちを炎から救って。私のパーティーには必ず妖精たちを誘うわ……ずっと。それでいいかしら? 」
『わーい、パーティーだ』
『けいやくせいりつ』
やけにテンションが高い妖精たちに、ルナは心配になる。
「……妖精たちは、喜んじゃってるけど、大変よ……? 」
困った顔のルナを見返して、マティーは眉をハの字にして笑った。
「大変かどうかは、生き残ってから考えるわ」
『けいやくをりこうするよ~~』
『パーティーだ! パーティー! 』
『マティー、だいすき~~』
マティーの耳には妖精たちのはしゃぎっぷりは聞こえず、ルナとマティーは光の渦に包まれた。
気がつくとホテルの外階段の下に、二人は気を失いうずくまっていた。
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