Kについて

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Kについて

Kというは、ひとり 水のようなもの 指先、ひたしてみたら Kは波打つ 耳までたっぷりと浸かると Kの音が聞こえてくる やがてKとの境をなくして Kの一部になってしまえれば 私は涙を流さずにすむ そうしてKの融点を探し 水のようなものの中でじっとしている わたしもまた、ひとり 晴れの日にも雨の日にもKは在る わたしはKと目を瞑る 鉛のように 目のない子どもになる そうして瞼の裏を満たしていくKはあたたかい 眩しくて ちりちりと刺激するもの Kはどこからやってくるのか わたしというものを 感覚として知ったとき わたしとわたし以外の世界の誰とも共有できないと知ったとき 世界の果てを考えたとき Kという言葉の意味も たった一人だった Kのふるさとはどこにもないし どこでもある わたしのKを自由に持ち運べたなら テーブルの上に生けて飾ろうか わたしのK Kは孤島のようなもの そうそう わたしたちの内臓にはランゲルハンス島という器官があるのよ
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