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マンションに引っ越してきてから半年が経った。マンションの住民との交流が皆無なのは気になるところだけど不便はないし、もしかしたらと期待していた心霊現象もない。事故物件と言うが、今までのどの部屋よりも住みやすい。この部屋を借りた人は半年で引っ越すらしいが、快適すぎて現状その予定はない。このまま一年ぐらい住んで噂をひっくり返してしまおうか。
そう考えていたが、その夜、ついに異変が起きた。
ギッ、ギッ……ギッ、ギッ……
パララララ……
部屋が鳴り、木屑が落ちるような音が聴こえてきた。普段はそんな音で起きることはないのに、この時ばかりは妙に気になった。もう一度寝るのは簡単だ。このまま目を瞑ればいい。でも、なんだか胸騒ぎがする。
起きるか寝るか迷っていると、外からパサッ、パサッと柔らかいものが壁を打つような音が聞こえはじめた。布か紙がどこかに引っかかって打ち付けているのだろうかと思い、うるさいから手が届きそうな位置にあったら外そうと窓に視線を向ける。
ヒュン――
風を裂くような音を立てて白いナニカが横切った。
今のは何だ。窓に駆け寄って少し手間取りながらも鍵を開け、首だけ外に出して周囲を見渡すも、特に変わったものは見られない。
シンと静まり返るマンションはどこか不気味だ。木がザワザワするぐらい風が強いからビニール袋が飛んできたのだろう。この部屋は事故物件で、半年も過ぎたから意識しすぎたのかもしれない。そう思うことにしてもう一度布団を被る。
カチ、カチ、カチ、カチ
規則的に鳴る時計の音が気になって眠れない。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
意識すればするほどうるさく、頭の中で鳴り響く。やかましい。買ったばかりだが捨ててしまおうか。
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