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翌日、あまり眠れなかったが日課になっている早朝散歩に出る。普段は外に出るだけで今日も一日頑張るぞという気持ちになれるのに、昨夜の出来事のせいでどうにも気分が乗らない。ちなみに新品の目覚まし時計は売ることにした。一人暮らしだし、少しでも生活の足しになれば良いだろう。
「おや、久しぶりだね」
「ん? ああ……小西さん。おはようございます」
公園で休憩していると、眠そうな顔をした男性に声をかけられる。彼は小西さんという人で、この公園の近くに住んでいる。引っ越してから仲良くしてもらっており、俺が困っている時によく相談にのってくれる良い人だ。正直、マンションの他の住民より仲が良いと思う。そもそも住民とは一度も顔を合わせていないから、仲が良いも悪いもないが。
「夜勤の帰りですか?」
「ああ、本当はもうちょっと早く帰る予定だったんだがなぁ……機械のトラブルで日が昇るまでかかっちまった」
「大変ですね」
「まあ慣れたものさ。ところで声にハリがないが、なんか悩みでもあるのか?」
「実は……」
俺は気のせいかもしれませんがと前置きをして、昨夜の体験を話した。小西さんは話している間、途中で俺の話を馬鹿にすることなく、真摯に耳を傾けてくれた。
「なるほどそんなことが……ああ、そういえば」
「何か知ってるんですか?」
「三年ぐらい前だったかな、夜勤中に体調が悪くなって早退した日があったんだ。その帰りに道を一本間違えてさ、マンションの裏に入っちまったんだよ。そん時に視界の端で何かが動いたような気がしてマンションを見たんだ。そしたら、真っ白な……たぶん人型のバケモノが四つん這いである部屋を覗き込んでいたんだよ」
「……もしかして」
「そう、君が借りてる部屋だよ」
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