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陽一は、パソコンを前に焦っていた。
画面上にはワープロソフトが立ちあげられ、その画面は真っ白。
苛立ちまぎれに、指先で机をトントンと叩きながら、カレンダーに目を向ける。
カレンダーにはいくつもの赤い丸が書かれている。
それらは今抱えている仕事の締め切りだ。
一番早い締め切りはすでに明日だったが、何のアイデアも浮かんでいなかった。
「クソ、頭も画面の真っ白だ。一晩寝れば、何かいいアイデアでも出るかと思ったけれど、結局真っ白なままだ」
間もなく編集者の担当から電話がかかってくるだろう。
進捗はいかがですか、などと言い出すのだ。
いやもう真っ白ですわ、では済まない。
「何か……何かアイデアは無いのか……」
椅子から立ち上がり、うろうろと歩き回るが何の閃きもやってこなかった。
「不味い……不味いぞ……」
「何が不味いのだ?」
突然の声に振り返ると、いつの間にか彼の椅子に担当が腰かけていた。
彼は立ち上がり、陽一に詰め寄った。
「何が不味いんだ言ってみろ!!」
「それは……それは……うう……」
担当はデスクの上にあったスタンドを手に取り、それを陽一の顔に向けた。
強烈な白い光が陽一の顔を照らす。
「さあ言えっ!! 何が不味いというのだ!!」
「うわぁ。やめろぉ!!」
あまりの眩しさに、彼は目を強く閉じた。
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