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監視モニターの向こうで椅子に拘束された陽一が動かなくなると、上級芸術監視官はフーッと一つ息をついた。
「まさか、創作までできるようになっていたとは……。監視体制の見直しが必要だな。おいっ」
「はい、芸術警戒レベルを引き上げます」
無機質な声で一人が答えた。
白いローブを着用し、髪も眉も髭も無いつるつるの顔をしている。
その目はまるで乾いたガラス玉のようだった。
「疑わしい者は片っ端から捉えて記憶を探れ。芸術の芽は残らず摘み取るのだ!! それと、奴の脳を限界まで探れ。やつは創作までしていた!! どこかに大規模な芸術家養成組織があるに違いないのだ!!」
はいっと、室内にいた全員が声を揃えて返答した。
部屋にいる誰もかれもが白いローブを身に纏い、毛の一本も生えていない顔をしていた。
無機質なガラス玉の様な目玉も同じだった。
監視官は彼らを見て満足そうに頷いた。
これこそが理想の民だ。
訳の分からん芸術などという物は、この世から抹殺せねばならん。
その時、監視官の中でとある疑問が芽吹いた。
視線が交錯した途端に電撃が流れるとはどういう仕組みなのだろう? ひょっとして、そう言う兵器でもあるのだろうか。あるいは何か感情的な比喩か?
だとしたらその感情は……。
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