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「外には化け物がいるから決して出てはいけないよ」
そう両親に言われ続けていた。
そんな私の生活する場所には窓がなかった。だから、私には外の世界を見る術がなかった。
それでも本の中や誰かの話で聞く外の世界に憧れは募る。
空ってどんなものかしら。太陽や星や月は?お天気って、なんて不思議なんだろう。
木々や花に山、町の姿、お家の屋根だってみてみたいわ。
外の化け物がどんなに恐ろしく強大なものであるかなんて知らずに想いだけが重なっていった。
ある日、意を決して外へと出た。
初めて見る晴々とした青空に小鳥の声、吹き抜ける風の清々しさといったら!
それに、どこをみても化け物なんていなかった。
いるのは普通の人々が普通に歩いているだけだった。
お父様もお母様もきっと何か勘違いしてたのね。
何もかもが杞憂だった。恐れるべきものは何もなかった。
だんだんと気分が良くなって鼻歌をふんふんと歌いながらスキップして街中を進んでいく。
たくさんの人、たくさんのお店、全てが初めてで輝いて見える。
ーーああ、なんで素晴らしいんでしょう!
「おい、見たか、表を化け物みたいな女がスキップして通ってるぞ!」
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