降車

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降車

30分ほどでタクシーはヒロシの横浜のオフィスに到着した。ビルの車寄せにタクシーが停車した。 ヒロシはお金を払い、運転手に言った。 「間に合ったよ、安全運転でありがとう。」 「ありがとうございます。また乗って頂戴ね。」 タクシーのドアが閉まり、走り去っていった。 ヒロシはオフィスの入り口に向かいながら思った。 「(なんとか予定の時間前についた。あの運転手さんに感謝だ。タクシー代が余計だったけどね。たまには忘れ物もしてみるもんだ。・・街で一番最長老のタクシードライバーに出会うことなんてめったにない。)」 しばしの運転手の会話にほのぼのとして良い気分になっているヒロシだった。 オフィス入り口に入るところで、ピロッと会社用スマホの音がなった。スマホをカバンから取り出してそれをみながらつぶやいた。 「今日は2回もこいつを忘れたな。」 ヒロシは苦笑した。スマホにはメッセージが1通届いてた。 「あれ? アキからだ。」 スマホを操作すると、画面に次のメッセージが現れた。 『リョウと喧嘩してさっき別れた。話聞いてよ。今夜飲もうよ。』 ヒロシ、 「なんだよ、ほんの少し前までいちゃいちゃ仲良くしていたじゃないか。あれからすぐに喧嘩したのかよ。波乱万丈なバカップルだな。」 そうつぶやきながら、スマホで『りょ!』と打ち、送信した。 すぐにピロッとスマホがなる。アキからのさらにメッセージだった。 『さっきさぁ、タクシー乗って駅前通りで追い越したでしょ。なんであんな時間に地元にいるの? 何してたの? 興味津々!』 ヒロシ、 「なんだ、バレていたか。喰えない女だ。それにしても俺を飲みに誘うって、おやじの懐目当てだろうなぁ。まぁ、いいか。今夜は楽しいお酒にしてやろう。」 ヒロシはビルの中に消えて行った。 ~その日のアキとの地元での飲み会は、アキの喧嘩の話はどこへやら、最長老タクシー運転手の話題とヒロシの忘れ物性への攻撃で盛り上がった。ヒロシにとってバタバタと色々とあった一日、でもどこか充実した一日だった。~ (了)
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