1人が本棚に入れています
本棚に追加
扉を閉じ鍵をかければやっと心が安定してきて
のしかかってくるような重さが体に残っている
気がする
限界を感じ入ってすぐのイスに腰掛ければ怠さが襲ってくる
エマ「やっぱり疲れたんだ…
そうだよね。こんなこと滅多にないもん」
納得と半ば諦めに近い感情が渦巻いていた
私にできることなどたかが知れているかのよう
…お母さんのような輝かしい饒舌な狩人の姿には
程遠くて努力しても届かないものがあるのだと
とても辛くなる
ふと目の前にある机の上を見れば見知ったカードがあって そのカードを眺める
エマ「ねぇ、私が見てきたお母さんはとっても
輝いて見えたけど、それもこんなに辛い思いしていたから?
そんなこと、ないよね?」
憧れだった この饒舌な狩人という役職は思っていたものと違っていて明るさとはかけ離れていることが悲しさを溢れさせる
饒舌な狩人になれば大切な人を守れるんじゃないかって考えていたのに現実の違いは明確で
守りたい人達は自分を遠巻きにして離れていく
エマ「なんで、こんなことになったんだろ
それも全部私のせいなの?
力不足だから?それともこの能力のせい?」
涙が溢れてしまった目でカードを見やれば
今まで気づかなかったが饒舌な狩人のカードと
重なっていた二枚目のなにかがひらりと落ちる
エマ「恋人のカード?これは…何?」
知らない、こんなカードを見たことがない
私が知っているのはこの饒舌な狩人のカードのみ
これは一体?
GM「お気づきになりましたかエマ様
エマ様の疑問はこちらで回答いたします
初めての人狼ゲーム参加につきまして
ご説明させてください
なお、ご存じであるかと思います故
人狼についての説明に関しては省かせていただきます」
横から聞こえた言葉にびくりとして言葉を失う
人がここにいるはずはなくて警戒しながら
声の主にゆっくりと目を向ける
エマ「……貴方は誰ですか?」
GM「ご紹介が遅れて申し訳ございません
私はGMと申します
人狼ゲームの進行を勤めることとなっています
今いる方々は5人。
その中に一人、狼が紛れています」
GM「その狼を議論によって見つけ、処刑することが市民陣営のすべきことです」
話が飛びすぎていて思考を放棄したくなる
でも分かることは私は市民の味方であること
エマ「人狼が私を除いた4人の中にいて市民は
狼を殺さなきゃならないってことですか?
なぜこんな館で…」
私が半信半疑で問いかければ答えはすぐに返ってきた
GM「今のその認識で構いません
そして詳しいことは知らない方がよいかと
後一点、エマ様は市民陣営とは別の陣営でございます」
エマ「え?なんで…私は市民の味方ではない?」
わからない、どうして
饒舌な狩人は市民の味方のはず
GM「混乱なさるのも無理はありません
ですが、今の貴方は恋人陣営です
恋人を守れなかったとき恋人と共に死亡します
恋人となった者と共に生き残ることが勝利条件となります
貴方様の恋人はビル様です」
…私は市民の味方ではない
その言葉が私の頭にぼんやりと響いた
市民の為に守る それだけを考えてきたのに
私は味方になれない?そんな…
確かな絶望に近い感情が渦巻く
どうしたらいい
考えはまとまってはくれなかった
GM「これにて説明を終わりとなります
配役表をこちらに置いておきます
ご参考までにお読みください
短い間ではありますが夜をお楽しみくださいませ
では失礼致します」
一人残され今の状況を理解することに徹する
恋人と言われたビル爺ちゃん?を守れなければ
私も死ぬ
あまりに理解するのにしたくない
現実逃避したくなるような事ばかりだった
恋人…そんな人が恐ろしい見知らぬゲームの中でできるなんて思わなかった
相手も子供じゃなくてお爺さんだし
どんな人かもよく知らないし
やっぱり納得できるわけがない
でもまだショーンと呼ばれる人よりも選ばれたのがビル爺ちゃんで良かったなんて思う
私に優しくしてくれたあの人は私を傷つけない
それだけは何故か確信できる気がした
配役表と言われた物に目を通せば役職と能力
が記載されていて、それを何度も読む
私が恐れなければならないのは独裁者
ビル爺ちゃんが独裁者であればいいのに
なんて思う。まだわからないけれど
私に誰かを守らせてほしいと
私は饒舌な狩人
その説明を読めば疑問が浮かぶ
エマ「ワード…どうやって配るんだろう?
またこの部屋にあの人がくるのかな
なんなんだろうGMって」
考えれば考えるほど疑問ばかりが出てきてしまう
詳しいことは知らない方がいい
そう言うってことは聞くなということだと思った
なら考えないことにしよう
勝手に理解して疲れた体を休めるために
用意されていたベットに ぼふっ と音をさせて
倒れこむ
エマ「んー。久しぶりのふわふわな布団
幸せ。暖かいなぁ…おやすみなさい」
ふんわりとした布団に入れば眠りへ誘われていく
最初のコメントを投稿しよう!