1人が本棚に入れています
本棚に追加
ビル「そうとはいえソフィア。大丈夫かい?
あまり喋っていないが」
分からなかった、ずっと大切な人の事を考えていたらソフィアの存在すら忘れてしまっていた
ソフィア「ああ……すまない
どうするべきか分からなくてね」
エマ「うん、その気持ちもわかるよ
何にも分からなくて怖いよね」
私は恋人であるあの人が殺されてしまわなければそれでいいの
……そう思うのは自分への言い訳かもしれない
正しいと思っていたい自分の醜さ
ビル「少しは喋ってみたらどうだろうか」
ソフィア「……………………」
その呼び掛けにも虚ろな表情のまま何も言うこともなく佇むソフィアの姿は誰がみても異様なものだった
例外なく私も怖く思うくらいに
ショーン「ふむ。死にたがりにしてはビルさんには生存意欲があるように思いますが?」
チクチク刺すような物言い
やはり彼は私達の脅威になるみたい
きっと役に当てはめるとするなら狂人より彼は
独裁者の方が正しいのだろう
ビル「だからわしは狼ではないと言っているんだが……どうしてもショーンはわしを吊りたいようだね」
ため息をつくビル爺ちゃんを見て私まで悲しくなってきてしまう
疑い合いたくない、そんな感情があの人から
見えるからこそ辛くなる
そんな人が狼なのだろうか
やっぱり一縷の希望にすがりたくなってしまう
ショーン「当たり前でしょう?
これは狼を殺すゲームなのだから」
そうやって不敵に笑うが、もしビル爺ちゃんが狼であったなら恋人もいる
だから殺されずにすむと知っていた
私達が恋人でなければ良かったのに
エマ「ショーンさん、違いますよ
ここはまず、恋人を殺さなければならないお部屋
です。そうじゃありませんか?」
ビル爺ちゃんを守りたい、もやもやとしていた気持ちを抑えていたら声が出てしまっていた
エマ「あっ」
ダメだったと思っていてすぐに口を押さえたものの出てしまった言葉は戻らない
ショーン「エマさんは狼を庇うと?
それは狼の味方…狂人だと自分が言っているのと同義では?」
その瞬間にギロリと睨まれ完全に萎縮してしまえば何にも言えなくなって
エマ「あっ、え…えっと。そんなことないです」
自然とじわりと目に涙が浮かび
何を自分が話しているのかもわからなくなって
おろおろとしている私にそっと手が伸びてきて
気がつけば優しく後ろに隠されていた
エマ「え?ビ、ビル爺ちゃん?」
混乱と悲しさでぐしゃぐしゃになった顔で
問いかければ
ビル「こんな子供に詰めよって
何が言いたいんだいショーン
とても貴方の方が人間には見えませんよ
この子は女の子なんだ
もう少し ものの言い方というものがあるのではないかな」
優しいけど威厳を崩さない声が私を守っていた
ごめんなさい、私…何にもできなかった
ショーン「ほぉ…貴方がそれを言いますか
人の皮を被った化け物は貴方でしょうに
それに子供でも人に仇なす者の可能性があるなら容赦すべきではない
そうでしょう?なにか間違っているとでも?」
尚も攻撃体制を崩さす睨み付けるショーンさんに恐ろしくて ろくに前もみられなくて
ビル「……黙れ若造が!!何も知らぬその口で
正しさを語るでない!!」
いつも温厚で声を荒らげる事のなかったあの人が
こんなにも怒るなんて思わなかった
その見たこともない剣幕にそこから無音になる
険悪な空気に息ができないくらいだった
ソフィア「ねぇ、もううんざりなんだけど」
エマ「え?」
その言葉に耳を疑った
重い静寂を破ったのは紛れもなく最初から反応のおかしかったソフィアさんで驚きを通り越して恐ろしかった
ソフィア「僕、こんな議論に興味ないんだよね
だから早めに退場させてもらうよ
僕が死にたがり…殉教者だよ
早く殺してよ?無意味な世界にいるのがうんざりなんだ」
最初のコメントを投稿しよう!