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─────1年後─────
広い川原では、二つの暴走族が衝突しようとしていた。まさに一触即発の状態。戦いの火蓋がきって落とされそうになったそのとき、
「こんなとこでやらないでよ。近所迷惑」
そんな声が唐突に聞こえた。
そして、その人は突然現れた。
「やるならもっと人の邪魔にならないとこにしなさい」
それをみた瞬間、そこにいたほとんどが見惚れた。美しい女だと全員が思った。
だがその言葉に反論する声が
「どこでやろうが、俺たちのかってだろうが」
片方の族の総長らしき人が放った声に同意の声が上がった。
「そう…それなら」
女が動きすぐ近くにいた族の下っぱを、
殴った。
「やられても文句ないよね?」
そのあとの女の動きは、素早かった。早すぎて見えないほどだった。その女にあんなにいた人がみるみる減っていってついには、立っているのはその女だけになった。
「歯ごたえないね。つまんない。」
そういって、女はその場を去ろうとした。
「待ってくれ!」
その声に振り替える。その声は、もう片方の総長の声であった。
「久しぶりだね。けれど、まだ強くなれるよ。慢心しないでここまでおいで」
「覚えていて・・くれたのか?」
「もちろん。あんなことを私にいったのは貴方が初めてだもの」
そういって女は笑った。ヒマワリのように明るかった。その笑顔に意識があったもの全員が顔を赤くした。そんなまわりに女は不思議そうな顔をしたが、きにせずいった。
「もっと人の邪魔にならないとこでやりなさい」
「・・・わかった。なあ、」
「何?」
「もし、お前のことを見つけたら、もっと強くなってアナタを守れるまでになったら、」
そこで言葉を止め、そして、
「俺と・・・付き合ってください!」
言った。
その言葉に、女は驚き固まってしまった。
だか、次の瞬間、悲しそうな顔をした。
「じゃあ、見つけて、私の正体がわかってもそれでも付き合いたい、私のことが好きだと言うのなら、考えてあげる。」
女は、話している間ずっと悲しそうな、泣きそうな顔をしながら今度こそその場を去っていった。
「絶対見つけてやる。なあ『舞蝶』」
舞蝶
それは女の通り名だった。
舞うように動き人を魅了するそれはまるで蝶のようだからと、いつからかそう呼ばれるようになった。
(それにあんな顔をさせたくない。)
なにか隠しているのだろうが、それでも一緒にいたいと、思った。初めての恋。
その恋は実るのだろうが。
それは、誰にもわからない・・・・・・・
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