おみくじと信仰心の話。

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 などと独り言ちながら、両手の親指と人差し指で『末吉』と書かれたおみくじをつまみ持つ。  このまま手首をちょいと捻りさえすれば、びりりという乾いた音と共におみくじは真っ二つになる。ただの、文字の書かれた紙切れになる。『おみくじを引いた』という事実をなかったことにできる。周りがうるさくてお願い事に集中できていなかったからなどと屁理屈をこねて聞き流して、また改めて引き直せば同じことだ。  それは。でもやっぱり。  ──『悪い』ことなんだよな。きっと。  感情と理性に板挟みにされた心はどちらにも傾けず、面倒臭くなった僕はおみくじを折り畳んで上着のポケットに突っ込んだ。 「別に、『悪い』ことではないと思うがね」  ざぐ。  と、傍らで誰かが砂利を踏んだ。
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