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目が覚めると、前方に真っ白な海猫のツガイが水と戯れていた。
視線をゆっくりと下へ移すと、ダッシュボードに三つ折りの手紙が置いてあった。
瑞希は生きていることに感謝し、おもむろに手紙を開けてみた。
手紙にはこう書かれている。
杉浦瑞希 様
昨日は大変失礼しました。我々はこの埠頭で、闇オークションを生業とするコソドロ軍団です。貴殿を拉致したときは、場合によっては埠頭の海底に沈めるつもりでした。
ところが、うちの若い連中がスマホの連絡先を見て、貴殿があのお天気キャスターの杉浦瑞希さんと分かり、丁重に解放しました。
日頃、若い連中に泥棒は家業でも、人の笑顔までは盗むなと教えています。
夕方、みんなに明るく笑顔でお天気を教えてくれる瑞希殿を殺すわけにはいきません。どうぞお許しください。
コソドロボス
読み終わると、瑞希は笑みを浮かべた。
朝焼けを背に、銀色のポルシェで港北方面へ駆け抜けて行った。
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