8人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数時間後。
パパの謎の言葉は、深夜0時を過ぎた時に解明した。
日付が過ぎた瞬間にお祝いメッセージをくださる友達なんていない私は、夜9時には就寝した。
午後10時から午前2時までの間は成長ホルモンの為にも熟睡状態でいた方が良いって、同じ授業を選択している女生徒達が隣で話してたの。そして平均睡眠は8時間が理想的とも。
だから私は毎日午後10時から6時までは、がっつり寝る事にしている。
しかし今日に限って、耳元で、突然時報が聞こえたわ。
“タダイマヨリ 午前 0時 0分 0秒 ヲ オシラセシマス”
ガチャンゴンッ!
ザッザッザッザッ
“ピ・ピ・ピ・ポーン ”
はっぴベチャッ!
「べふっぶっ!」
電子音と同時に聞こえた雑音。
その後に「はっぴいばぁすでぃぃい」と、多分、言っていたわ。
多分というのは、その声がきちんと届く前に、私の顔面には何かがベッチャリと張り付いていたから。
不意打ちの襲撃は心臓に悪いわ。
そっと目を開けると、目の前は真っ白。
落ち着いて起き上がると、お腹へスライドするように、顔に張り付いていた物体が落下していく。
口の周りを舐めると甘い。このコクは油脂分48%。濃厚でいい生クリームだわ。
「あ、ああ、荒押さぁん、お、お誕生日、おめでとうねぇ……」
常にバイブレーション機能が付いているこのお婆ちゃまは、大家の幕の内弁子さん。
はにかみながら、おでこに張り付いた苺を私の口へと突っ込んでくれたわ。
「弁子さん、ありがとうございます」
鼻に封入されたクリームを一息で押し出し、私は苺を咀嚼した。この味、あまおうかしら。いえ、この酸味はあきひめね。
最初のコメントを投稿しよう!