ステキな誕生日

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 お気に入りのスベスベマンジュウガニ(ゴニオトキシン等を保有する毒蟹)柄のパジャマがクリームまみれだわ。 「弁子さん、お祝いしてくださって有難いのですけど、わたくし休みたいので、今日のところはお引き取り願えますでしょうか。このお礼は日を改めてお伺いいたしますわ」  いそいそと次のクリームを泡立てる弁子さんを丁重にお帰り願い、私はヒョウモンダコ(テトラドトキシン等を保有する毒蛸)柄のお気に入りのパジャマ2に着替えて床に入った。  パパの言った意味がよく分かったわ。  こんなサプライズ、初めてよ。  *  幕の内弁子さんの奇襲(おいわい)のお陰で寝不足だわ。朝食も“丸ごとマグロ佃煮パン”を5個しかいただけなかった。  でも、ハッピーバースディと言っていただけるのは嬉しいわ。今日はお気に入りのチンアナゴのワンピースにして、わたくしも自分に「ハッピーバースディ」って言ってあげた。  寝不足に朝日はきつい。玄関を開けて、外の眩しさに目を閉じた瞬間、顔面に衝撃があった。 「お誕生日おめでとうございます!」 「どっふぐん!」 「あっ、そっとそーっと。外しますよ? 動かないでくださいね?」  クリームを投げておきながらも後処理を気にするタイプね。  目を開けると白いクリームでよく見えなくなってる。「まだ動かないで」とクリームを投げた人間は、濡れたティッシュで私の顔面を丁寧に拭ってくれた。 「お気遣いありがとうございます。あなたは、お隣の、確か、えーっと、女性……」 「蜜柑俵(みかんだわら)葱子(ねぎこ)です」 「そう、葱子さん。思い出したわ」 「いえ、初めて自己紹介しました」 「そうね。それも思い出したわ。なぜ誕生日、いえ、ケーキを顔にぶち当てたのかしら?」 「いえ、お誕生日おめでとうございます」  弁子さんと同様に、蜜柑俵葱子さんもはにかみながら言った。  初対面であるにもかかわらず、彼女のスウィングは躊躇ないものだったわ。やや小ぶりのケーキだったのは、彼女も自分の生活の中でやり繰りをしてケーキを購入してくれたに違いない。  
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