第8章 たった一枚の「写真」

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拝啓 初冬の候 (たちばな)教授ご夫妻におかれましては益々ご清栄の事と心よりお慶び申し上げます。 さて、大変恐縮ではございますが堅苦しい挨拶はこのくらいにして本題に移らせていただきます。 覚醒された貴方(橘教授)の愛娘たちはどれも素晴らしい能力の持ち主のようです。 そんな最中でございますが、あろうことに二三さんがあなた方、橘ご夫妻の顔を見てみたいと私に懇願してきた次第であります。 悩みました。 現存するあなた方の唯一の写真。 一層のこと、見せてしまおうか?などと(よこしま)な感情が肥大していく己を目の前にし、その内、私自身の自我が崩壊してしまうのではないかとも感じました。 けれど、御安心下さい。 いつかさんと二三さんには、まだお見せするつもりはありませんから。 そう、まるで悪魔の様なあなた方が写し出されたあの写真を。 では最後に。 もしも、あの()たちに再び何かしらの変化、並びに異変が見受けられる様であれば、その都度報告させていただきます。 敬具 平成二十七年一月二十九日 千樹
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