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真実
シュンスケは少し雑談して帰った。
殻を破って出てきた本体。俺は現実を見つめなおすために、自画像を描くことにした。恥も外聞も捨てエゴンシーレの続編的な俺の全身を描く。
絵筆を持ち全身が映る鏡を見ながら300号のキャンバスに、ありのままの自分を投影していく。アソコはどうすべきか迷いながら大雑把に全身のシルエットを仕上げた時だった。
「マサトさん。心と体を正直に見つめて。迷うことないわ。待ってたのよ。二人でイキましょう。燃え立つ真実を表現して何がいけないの?」
「アンナ?どこにいるの?」
「マサトさんの情熱の中にいるのよ。マサトさんの命の中に私はいる。自分を見つめることは恥ずかしいことじゃない。ナルシストじゃない。孤独じゃない。自己中じゃないわ。誰だって自分を愛してる。自分の心も体も何より大切だわ。生物なんですもの。自分の命の形を愛したいのは本能でしょう。」
俺はたとえ俺自身の幻聴だとしても、アンナの声に感動する。
「アンナ。ありがとう。俺は今まで自分を愛してこなかったから、他の誰かを愛することも苦手だったのかもしれない。自分の真実を描く勇気は、他人の真実に向き合う勇気への一歩かもしれない。挑戦してみよう。アンナ、手伝ってくれる?」
「もちろんよ。マサトさん、愛してるわ。私の体、覚えてるでしょう。私の体はマサトさんの体と共にある。お願い、しっかり繋がって。深く熱く力強く私の中心に突き上げて・・・私と同じカドミウムレッドディープを差し色に入れて・・あ・・・素敵・・イク・・・」
触れない彼女と共に絵の中で俺は絶頂を描き続けた。
勇気と真実を描き続けた。
完
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