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プレハブの天国
俺は音楽を聞きながら絵画を制作するのが好きだった。
「絵の具で壁や床が多少汚れてもいい物件。部屋の入口が3メートルくらいの絵を出し入れできて、できれば夜中でも音楽聞いてもいい部屋なんて、ある訳ないですよね?」
という俺の超ワガママな要望に対し
「ありますよ!ちょうどいい物件。しかも格安。月3万ポッキリです。」
と言われた時には、正直、騙されているかと思った。部屋にトイレがないので安くしているというが、トイレなんて自分のところにない方が掃除の手間も省ける。プレハブは相当古いものだったが雨漏りさえしなきゃいい。
プレハブ小屋には2間の引き戸の出入り口があった。パチンコ屋の倉庫だったらしい。その引き戸を取り外せば500号サイズでさえ出し入れ可能なのだ。冬は寒く夏は暑いが、死ぬほどではなかった。キャンプしていると思えばいい。
そこは俺にとって天国のような空間だった。古い雑居ビルなのでエレベーターはないが、そんなことは苦にもならなかった。
プレハブ小屋の外で、七輪で魚を焼いたり焼肉を楽しんだ。仲の良い連中は、勝手にアルコールと食材を持って集まって来て朝まで騒いだ。
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