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「どうしたんだい!」
「最近、食べる量減らしてて……」
「どうしてそんな馬鹿なことを!」
「作ってくれるお父さんもお母さんも石になっちゃったし、目が見えないから狩りなんて出来ないし、畑に掘りに行くことも出来ないし、水も汲めないから…… 家にある食べ物を食いつぶすだけなんだ」
あたしのせいか。女は猛省するも、悪いのはあの女だ、あの女があたしをこんな体たらくな体にしたせいだと瞬時に自己正当化に入る。
「あたしは悪くない…… あたしは悪くない……」
女は後悔に押し潰されそうになりながら蛇がうねうねと何頭も舞い踊る自らの頭を抱える。
そうしているうちに少年はその場に力なく倒れ込んでしまった。貧富の差の激しいこのご時世、食べるものもなく餓死する子供がいても珍しいことではない。単なる野垂れ死にだと少年に対して何も思うこと無くその場を後にしようとした。すると、自分が石にした少年の母親の石像と目が合う。釜戸の前に「居た(置かれていた)」のだが、踵を返していた。その姿は少年の遥か後方にある扉に走らんとするものであった。女の顔を見て恐怖に慄きながらも少年を守ろうとしたのだろうことを女は察した。
そして、少年に償おうと思ったのだった。
「この子はどうせ目が見えない…… 姉さま達を見て怖がることもないし、あたしを見ても石になることはない」
女は少年を胸に抱き上げ、黄金に輝く翼をはためかせながら自分が塒としている洞窟へと飛んでいくのであった。
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