大村信一郎の一分間

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 見上げたという点は重要だ。  その下半身は空中で静止していた時間がある事を示している。  という事は、下半身には何かしらに捕まって落下を阻止できるもの……例えば上半身があったって可能性はかなり大きい。  上半身と下半身が揃っているとなると、それは女子って事になる。  パンツに収まった女性物の尻が眼前にあり、両頬には太ももと思しき柔らかな感触。それらは女性物の下半身が俺の顔を跨いでいる事を示している。その下半身には上半身が付いていた。  ここから導き出される結論。  考え難い事だが、今の俺は女子に顔面を跨がれているらしい。  もし女子に顔を跨がれているのであれば、これは俺史上空前の大事件だ。だが、まだ確実ではない。俺はこの目で女子の上半身を拝んでいない。  事が事だけに、慎重に考えねば。  大切なのは、この下半身と俺が見上げた下半身が同一の物かどうか。  もし同一であれば、それは女子だ。ちょっとしたロマンスの予感。だが、別の……例えば下半身だけの何かならそれは怖い話だ。
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