松本亜寿美の一分間

2/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 まず私は演劇部所属。文化祭に上演する演目の脚本を任されていた。  二学期に入ったら稽古が始まるから、夏休みの間にとにかく書き上げて部長に提出するところまではやらなきゃならない。  ところが、家じゃちっとも集中できなかったのよね。漫画とかゲームとか昼寝とか誘惑だらけで。仕方なく部室に来たけど、結局ちっとも進んでなくてイライラしてた。  必死で考えていたはずが、ふと、窓ガラスの汚れが気になりだしたのよ。試験前に掃除したくなるのと同じ奴ね。  掃除して綺麗な窓から外を見ればアイデアも浮かぶはず、とも思ったわけ。で、いそいそと雑巾とバケツを用意した。  ところが、汚れが手の届かないところにあったわけよ。  諦めれば良かったんだけれど、悩んだ末に私は窓枠に跨って身を乗り出した……。  そしたら、バランスを崩しちゃったわけ。情けない。  窓枠に捕まる事ができたのは奇跡だったわ。  で、慌てて助けを呼んだ。でも、当然誰も助けてくれない。だって、夏休みだもの。私一人しか部室にいないからね。  まあでも、咄嗟に助けを呼ぶ声が出せるってのは大切な事だと思う。一瞬の迷いが、そのまま生死に直結する場面もあるわけで……。  一つ想定外だったのが、よじ登ることも出来なかったこと。私って案外非力なのを今回知ったわ。  まあ二階だし? 落ちるよりは手を放して、気合で着地すっか、と思って手を離したんだけど……。  気が付くとこの状態ってわけ。  ひょっとして、今の私ってかなりヤバい?
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!