舞い降りた鶴

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 僕はいま、終わろうとしていた。  なにに対しての終わりかって? 社会的な意味でだ。 「放せ! 放せったら!」  小学校の頃からいじめられっ子だった。きっかけは学校のトイレで大のほうに入ったこと、ただそれだけだ。もともとの内気な性格もあったんだろうけれど、それからのぼくは『クソ』なんて直球にしてあんまりなあだ名をつけられて、キモイだの死ねだのと心無い言葉を浴びせられて生きてきた。  だから、高校は目の前のやつらとは絶対に違うところに行こうと、僕のことを誰も知らないところに行こうと、わざわざ山を越えた先にある違う地方の高校に進学したのに。  高校生活五日目の帰り道、小学校からずっと主に僕をいじめてきた目の前の二人に捕まった。お金を要求されたので当然のごとく逃げ腰になって断ると、機嫌が悪かったらしい二人は、僕を公衆トイレへと連れ込んだ。  よくある便器に顔を突っ込まれる展開だと思って暴れたけれど、どうやら違ったらしい。  公衆トイレの冷たい床に無造作に転がされた僕は、いままさに服を脱がされようとしていた。たまらず「男なんて脱がせてなにが楽しいんだ! お前ら実はソッチかよ!」と叫んだら、「んなわけあるかぶっ殺すぞ」と殴られた。  それでわかった。これ、恥ずかしい写真撮られて後々まで脅されるパターンだ。
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