舞い降りた鶴

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          * * *  きっかけは小学四年生のときだった。  学校で、我慢できずにトイレの個室に駆け込んだ。それだけだ。場所が学校というだけで、その生理現象は誰にでもあることだというのに。  クラス内でも決して足が速いわけでもなかったし、成績もあまりよくなかった僕は、有体(ありてい)にいえば内気な性格だった。そこにそのことが重なって、僕はいじめの標的にされた。  のろまで、馬鹿で、学校で大をした奴。小学生にとって、いじめの理由はそれだけで十分だ。ようするに、自分より下の、弱い人間なら誰だっていいのだ。  廊下を歩けば臭くもないのに臭いといわれるし、女子にはキモイと逃げられる。男子にはすれ違いざまわざと肩をぶつけられたりして、死ねとささやかれるような毎日だ。机にとぐろを巻いたウンの落書きをされたのも十回や二十回じゃない。  担任の先生に相談もした。けれど、単に遊んでいるだけとか、じゃれあっているだけと思われたみたいで解決したことは小四から中三にかけて一回もない。証拠として落書きを見せれば帰りのホームルームで注意してくれた先生もいたけれど、そうなると証拠の残らない言葉で僕を傷つけにくるから悪循環だった。
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