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私はこの冬に祖父から受け継いだシロビレをもって山にはいる。
深く雪に閉ざされる前の、吹雪だった。
「おめぇ! おんなが森さいくのか⁉」
こう祖父に言われたのが数年前、私はどうしても狩らなければならない相手がいる。
罠では不特定多数の獣を殺めてしまう可能性があり、シロビレを私は選んだ。
それから、仕事の合間を見つけては山の歩き方、体力、技術、自由な時間は全てこれに注ぎ込んでいる。
祖父も私の理由をきいて、渋々山に入ることを承諾してくたが、その年は男性陣は山に入らない。
シカリを務めた祖父の言葉だから、みんな従ってくれたのか、それとも私を純粋に応援してくれたのかわからない、けれどもすべてはこの僅かな期間にかかっていた。
「いいか? 危なくなったら帰ってくるんだ」
「えぇ、もちろん! 大丈夫、心配しないで」
「チエはせたぎに戻れと、今から言っても遅いべが?」
「何をいまさら? 安心して、それにイタズは狩らないから」
「んだども……」
心配そうな瞳が私から離れない。
だから、今度は私から離れていく。
「さようなら! 絶対帰ってくるから安心して」
まだ、吹雪が落ち着いて間もない時間帯に私は一歩、その神聖な森へと入っていく。
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