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卓也とは結婚してもうすぐ一年になる。
元々同じ会社に勤めていて、他の人の仕事も嫌な顔ひとつしない姿を見て、優しい人だな、とずっと気になっていた。
そしてある日、急な仕事を引き受けて昼食を食べに行けずにいる卓也を見かけて、私は自分のお弁当を卓也に渡したのだ。
「自分用なんで、そこまでいいお弁当じゃないんだけど」
「…いや、すっごく嬉しい」
そのときの卓也の笑顔を見て、私は卓也を好きになったのだ。
卓也は、卵焼きやウインナーといったありきたりなお弁当をニコニコと頬張ってくれた。
洗わずにごめん、と言われながら受け取った空のお弁当箱を握りしめて、ああ、人に喜ばれるってこんなに心が満たされるんだ、と私は感じていた。
だから付き合い始めてプロポーズされたときはもう夢のようだった。
卓也に尽くして感謝される人生を送れる私は何て幸せ者なんだろうと。
家をしっかり守ってほしいと言われて、今までのキャリアを捨てて仕事を退職することに何の迷いもなかった。
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