5350人が本棚に入れています
本棚に追加
「だけど、そんなのって……」
『優先されるのは、いつも仕事の方で……私のことは後回しで……』──そう話していた彼女の言葉が思い出された。
「ああ、情けないよな…」
鷹騰社長が自嘲気味な言い方をして、
「……だが、彼女をうまく愛してやることができないんだ……」
息をついて、青に変わったシグナルにアクセルを踏み込んだ。
「私も、同じなのかも……」
ようやく涙が抑まってきて、ぽつりと口にする。
「同じって、何があったんだよ? あんなところで泣くとか……」
「……うん…」と、ひと呼吸を置いて、「……振られたの、彼氏に…」と、打ち明けた。
「彼氏って、あの時のか?」
鷹騰社長が横目に私を一瞥する。
「そう…前にエレベーターで会った、あの彼に……」
「なんで別れたんだよ?」
変わらないストレートな口ぶりに、どうしようもなく心が惹かれてしまうのを感じる。
「こないだのことですれ違ちゃったから……」
「こないだ?」
私の答えに一瞬考えるような間があった後、「ああ、俺とのキスのことか……」と、鷹騰社長が呟いた……。
最初のコメントを投稿しよう!