第4章「閉じられた空間で、交錯する想い」

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歩き去ろうとするのにためらいがちに、 「春樹……」 と、もう一度小さく呼びかけると、行きかけていた彼がこちらを振り向いた。 「舞……」 私を見咎めて、 「ちょっと先に行っててもらえるか?」 傍らの彼女へ促すと、女性はもう此処には何度か来ているのか、知った風な足取りで先へ歩き出して行った。 「……なんだよ、おまえ…」 彼女が駅の外に出て行くのを見届けると、春樹が改めて私の方に向き直った。 「……うん…ちょっと、あなたのところに行こうと思って……」 会わずにいた三ヶ月分の気まずさが、今さらのようにずんと両肩にのしかかってくる。 「今になって、なんの用があるって言うんだよ……」 春樹が冷めた視線を投げかける。 「……あなたに、謝ろうと思って……」 重苦しい雰囲気を拭えないまま、向かい合わせでそう口を開くと、 「だから、そんなの今さらだろうが」 取り付く島もなく返して、「じゃあ、彼女待たしてるから」駅の構内から出て行こうとした。 「でも……」 言いよどむ私を、「でもじゃないし、」と、春樹が睨むように見る。 「謝ったって、どうにもならないだろ? おまえの言い訳とか、もう聞きたくはないんだよ。 だいたいわかってなかったのか? あんなに男の匂いさせて、俺のところに来ておいて……。 どれだけ心配したかわからないのに、浮気とかいい加減にしろよな……」 春樹の台詞に、ああやっぱり気づいてたんだと思った……。
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