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駅の外壁にもたれて、いつまでもぐずぐずと泣き止むことができずにいた。
……何、泣いてんのよ。泣いてる場合なんかじゃないのに……泣きやめ、私。
両目を手の平で強く押さえて、それでも後から後からこぼれてくる涙を、拳で力まかせに何度もこすった。
──と、そこへ、大きなざわめきが聞こえてきて、泣き顔を上げた。
見ると、駅のロータリーに目立つ赤いランボルギーニが止まっていて、人々の視線が一斉に集まる中、
ドアを高く跳ね上げ、鷹騰社長が車から降りてきた──。
「……あっ……」
私の前へ真っ直ぐに歩いて来た社長が、
「乗れよ…」
ぐいと強く腕を引っ張った。
「でも……」
周囲の目が気になってためらうのを、
「いいから、乗れ。こんなところで、泣いてんなよ」
と、手が引かれ、助手席に体を押し込まれた。
「……ちゃんとシートベルトしたか」
「…うん」と頷くと、エンジン音を響かせて車が走り出した──。
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