第4章「閉じられた空間で、交錯する想い」

19/41
前へ
/238ページ
次へ
駅の外壁にもたれて、いつまでもぐずぐずと泣き止むことができずにいた。 ……何、泣いてんのよ。泣いてる場合なんかじゃないのに……泣きやめ、私。 両目を手の平で強く押さえて、それでも後から後からこぼれてくる涙を、拳で力まかせに何度もこすった。 ──と、そこへ、大きなざわめきが聞こえてきて、泣き顔を上げた。 見ると、駅のロータリーに目立つ赤いランボルギーニが止まっていて、人々の視線が一斉に集まる中、 ドアを高く跳ね上げ、鷹騰社長が車から降りてきた──。 「……あっ……」 私の前へ真っ直ぐに歩いて来た社長が、 「乗れよ…」 ぐいと強く腕を引っ張った。 「でも……」 周囲の目が気になってためらうのを、 「いいから、乗れ。こんなところで、泣いてんなよ」 と、手が引かれ、助手席に体を押し込まれた。 「……ちゃんとシートベルトしたか」 「…うん」と頷くと、エンジン音を響かせて車が走り出した──。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5351人が本棚に入れています
本棚に追加