5357人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺のせいでなんて、悪かったな…」
「ううん……」と、首を横に振る。
「……私だって、悪かったから……」
「…そう、か…」
「…うん…」
会話が止まり沈黙が流れて──
「……俺がおまえを部屋に連れ込んだりしなければ、彼氏とうまくいってたんだよな…?」
あの日の出来事を気遣う彼に、「そうだったのかもしれないけど……」と、応える。
「……悪かったな」
繰り返される言葉に、「…………違う」と、首を横に振った。
「違うって、何がだよ?」
訊き返して、側道に車を寄せて停めると、
「話したいことがあるなら、俺に言ってみろよ?」
いたわるように聞こえる彼の低く抑えられた優しげな声音に、「……うん、」と、口を開いた──。
最初のコメントを投稿しよう!