第5章「最上階より、愛を込めて」

18/60
前へ
/238ページ
次へ
バスルームを出ると、腕を広げて待ち構えていた彼にふかふかのバスタオルで包まれた。 「……自分で拭けるってば」 「俺がしてやりたいんだよ」 バスローブを纏った彼に、タオルに(くる)まれたままで横抱きに抱え上げられる。 ベッドの上に身体が下ろされると、はだけられたバスローブの胸元にぐっと抱え込まれた。 「……こんな風におまえといると、(なご)むな…」 仰向けに寝転がった彼が天井を見上げて言う。 「…和むんですか?」 「ああ…和む」彼の口からふぅーっとひと息が吐き出される。 「……和むなんて、そんな言葉はあんまり似合わない気がするけど。……あなたは、いつも忙しそうにしている印象だから」 彼の肩に頭をそっともたせかけて言う。 「……そうか? これからは仕事も多少はセーブしていこうかと思ってる。今まで、忙しすぎたからな……。 ……事業もだいぶ軌道に乗ってきたことだし、仕事の量を控えておまえとの時間を作るようにするよ…」 「…いいの?」と、尋ねると、 「ああ…忙しすぎるのも考えものだしな…」 肩へ預けた私の頭を腕に抱いて、 「……それにおまえといるこの時間は、悪くはないからな…」 そう優しげに口にして、いつにない穏やかな表情でふっと柔らかく微笑んだ──。
/238ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5336人が本棚に入れています
本棚に追加