第5章「最上階より、愛を込めて」

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「ありがとうな。最後におまえと会えてよかったよ…」 「……。……ねぇ、もしかして、」と、彼の顔を窺い、「これから発つの?」と、尋ねた。 彼が休日には珍しいワイシャツ姿なのが会った時から気になっていた。 「ああ、まぁな…ずっと連絡するかどうかを迷っていたら、出発日ギリギリになってな…」 言って、傍らに置かれていたキャリーケースに目を落とした。 「そう……でも私も、最後に会えてよかったと思ってるから……」 「そう言ってもらえると、俺もうれしいよ…」 話して、短く息をつくと、 「……なぁ、俺たちは、どこで間違ったんだろうな…」 ふと眉を寄せて、苦い顔を作って見せた。
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