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その画面にちらりと『霧嶋 麗華』と、名前が表示されているのが見えた。
彼がグラスから持ち替えたスマホを手に立ち上がり、ソファーから離れて電話に出る。
彼女にはこれからも仕事面ではサポートしてもらうと前に言っていたから、きっとビジネス関係の話なんだろうと思う。
だけど、本当の彼女の気持ちは計り知れないこともあって、胸が騒ついてしまうのは隠せなかった。
電話を終えた彼が、「悪い、この後の予定が入った」と、私の方を振り返った。
「じゃあ、帰るね…」と、応える。麗華さんが訪れるのかを尋ねたかったけれど、それを聞いてどうなるんだろうとも思った。
来ることをはっきりと告げられても、もしも誤魔化されたとしても、どちらでもよけいに気持ちはざわざわと落ち着かなくなる気がした。
「また、俺から連絡する」
玄関まで送ってくれた彼へ、「うん、待ってるね…」と返して部屋を出た……。
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