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…………どれくらいそうしていたのか、不意にポーンとエレベーターが着いたことを知らせる音が鳴って、ビクッと顔を上げた。
「……舞さん」
中から降りて来た麗華さんに名前が呼ばれて、
「……もしかして、気になって帰れなかったの?」
と、問いかけられた。
「あっ…はい…」つい本音がこぼれると、「ごめんなさいね」彼女は謝って、「私も急いでたから、何の説明もできなくて」と、話した。
「明日の朝に提出する書類に、社長に目を通してもらって決裁を仰ぐ必要があって。急に来たりして悪かったわね。彼とはもう何もないから心配しないで」
彼女がそばに寄ると、愛用の華やかなフラワーベースのフレグランスがふわりと香った。
「そうだ、これからあのお店に飲みに行かない? 前に私と飲んでくれたでしょう? あの時のお返しを今日は私にさせて」
「はい…」と、小さく頷くと、
「じゃあ、行きましょう」
と、彼女は先に立って歩き出して行った。
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