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鷹騰社長の所有するバーで、カウンター席に並んで腰かけた。
彼女はカルーアミルクを頼み、私はいつもと同じドライマティーニをオーダーした。
「……彼とは、うまくいってるのかしら?」
グラスを軽く合わせた後で、そう問われて、
「……ええ、まぁ…」
と、まだ少し乗り切らない気持ちを抱えたまま、カクテルグラスを口に運んだ。
「……ドライマティーニ、気に入ったのね」
口を付けたグラスの中味に、彼女が目を留める。
こくっと頷いて、グラスを置くと、
「……ここで最後に話をした時にも、やっぱりあの人はそれを飲んでいて」
彼女が頬づえをついて、ふと呟いた。
「……マティーニを飲みながら彼の方から別れ話を切り出された時にね、そうなることはとっくにわかっていたような気がしたの…」
そう口にすると、手にしたグラスを紅くルージュの引かれた唇に傾けた。
「……私といても、あの人はビジネスライクな付き合いにしか思えなかったから……」
言って、ふっ…と小さく息を吐くと、「だからね……」と、私の顔をじっと見つめた。
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