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彼女の気持ちが痛いくらいに伝わって、
「謝られることなんて、何も……」
首を何度も横に振った。
「……私もね、すごく好きだったのあの人のことが。うまくはいかなかったけど、本当に好きで……」
そこまで言うと、今まで堪えていた涙が瞳から堰を切って溢れ、彼女が両手で顔を覆った。
「……麗華さん」思わずその肩を抱くと、
「……大丈夫よ、もう整理はついてるから」と、うつむいていた顔を上げ手を外した。
「……大事にしてあげてね。私が言うことではないかもしれないけど。……私は、あの人を仕事面でサポートするビジネスパートナーに徹するから……」
バッグから取り出したハンカチで涙を拭うと、吹っ切れたようにそう口にした。
「はい……」頷くと、
「乾杯しましょう? 最後に」
いつかの時と同じように、グラスがカチンと合わされて、
「幸せを、祈ってるわね」
柔らかで穏やかな笑みとともに、そう言葉がかけられた──。
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