第5章「最上階より、愛を込めて」

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──マンションに着くと、エントランスに通じる階段に立って既に彼が待っていた。 部屋に行くんじゃなかったんだと思っていると、階段を駆け下りてきた彼に、 「舞、こっちだ」いきなりぎゅっと腰が抱き寄せられた。 「ひぁ…っ」不意討ちで腰が捕まれて、びくりとする。 「ふっ…くく。なに変な声出してんだよ?」 「……そっちのせいでしょうーって、あっ…ん」 片手でぐいと顎が引かれて、そのままチュッと口づけられる。 「いろいろしたくなるのは、おまえが可愛いせいだろ」 「…も…やん」 「そんな可愛い声出すと、またキスするからな」 彼が耳元で囁くすぐそばをマンションの住人が通り過ぎて、 「…もう、ダメだってば…」 と、真っ赤になって開襟(かいきん)の胸元を両手で押し返した。
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