第5章「最上階より、愛を込めて」

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──カウンターに隣り合って座りマティーニを飲む。 「やっぱりマスターの作るカクテルが、一番うまい。おまえもそう思うだろ?」 「うん、こんなにおいしいのは、飲んだことがないかも」 「ああ、本当においしいよ。マスター」 彼にそう声をかけられて、マスターが「ありがとうございます」と、軽く頭を垂れる。 「そうだ、今日はおまえも何か飲めよ」 「はい、ではご相伴(しょうばん)にあずからせていただきます」と、マスターが再び頭を下げて、 「……社長は、いつも連れて来られるいろいろな女性にドライマティーニを薦められていましたが、いっしょに飲まれたのは舞様が初めてですね……」 作った水割りを含むと、そんなことをポロッと口に出した。 「おいこら()(すみ)、余計なこと言うなって…」 動揺しているのかマスターを名字で呼んで、彼がにわかに照れた顔つきになる。
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