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「そうだよ!9年間ずっと一緒だった俺のことを忘れるなんて、タカは薄情だよ。それにしても変わらないね」 見た目こそだいぶ変貌を遂げていてた篁だが、その弱々しい口調は当時のまま。 まだ少しの戸惑いを感じてはいたが、久しぶりである旧友との再会に俺はすっかり目の前の男へと心を許し始めていく。 「それより、タカはここで何してるの?」 俺を見下ろしながら話す篁。昔は俺の方が見下ろしていたから、この関係性は少々複雑であった。 「……俺?俺は、コンサートの設営バイトだけど」 「え?タカ、バイトなんてしてるの?」 驚愕した表情を篁は浮かべている。 それもそのはず、中学卒業以来連絡を取り合っていなかった篁が今の俺の家庭事情なんて知る由も無いからだ。 「……まぁ」 言葉を濁す俺に、篁は不思議そうな表情を浮かべる。 だがそれ以上、踏み入ること無く「そっか」と返した笑顔に、ようやく俺は幼き日の篁の面影をようやくそこに見出したのであった。 「タカちゃんこそ、どうしてここへ?」 今夜は、男性アイドルグループのコンサートだ。篁が男性アイドルに興味がある様にはとても思えない。 もしかして俺同様、バイトに来たのであろうか。 否、確か篁の家は良家だ。 当時からお金に困っている様には見えなかったが、高遠家(ウチ)の様にいつ何時事情が変わっている可能性も少なくない。 「――俺も、バイトだよ。社会勉強の為にね」 一瞬、含みある笑みを篁が浮かべたのは気のせいだろうか。 少しの違和感を感じた俺の気を逸らすかの様に、潤んだ瞳で篁は見つめていた。
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