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「明日は、カフェのバイト――」
篁へそう返事を入力したところで、俺は突如翔琉に逢いたい衝動に駆られる。
“年末年始は忙しい”
元々本人の口からはそう告げられているし、現にテレビを付ければ翔琉の顔を観ない番組は無い程出ずっぱりであることがその良い証拠だ。
だがそれでもやっぱり今、翔琉に逢いたい。
逢えなかったらせめて、声だけでも聴きたい。
得体の知れない不安を感じていた俺は、その不安を拭う為に何処にいても翔琉へと繋がれるスマートフォンのボタンを衝動的に押してしまう。
だがやはり本人の言っていた通り、無機質なコール音が無情にも鳴り響くのみ。
こういう時って、普通の恋人同士だったらすぐに電話……出てくれるものなのかなぁ。
心のどこかでがっかりしながら終了のボタンをそっと押す。
そっと溜息をついた次の瞬間、着信を知らせる音楽が流れた。
慌ててディスプレイへ視線を落とすと、そこには待ち望んでいた者の名前。
「――翔琉!」
感嘆の声を上げた俺は、はやる気持ちを押さえる為に軽く深呼吸してから受話器マークを押した。
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