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大晦日、今年最後のカフェでのバイトを終えた俺、高遠颯斗(たかとおはやと)は都内外れにある自宅へ着くと、何の気なしに自室のテレビの電源を入れた。 「あ、翔琉だ――」 国民的歌合戦の番組に、堂々たる袴姿で審査員として出演していたのは超人気俳優、(りゅう)()(さき)翔琉(かける)。 オールバックに整えられた髪は、いつの間にか綺麗なアッシュグレーに染められていた。 確か最後に逢った時には、いつもの茶色だった様な気がする。 新しい役作りの為だろうか。 「わ、カッコイイじゃん」 率直な感想が口を付いて出る。 流石“俳優”と名乗るだけあって、この男はどんな姿形であっても、見るもの全てを一瞬にして魅了する強いオーラを放っているのだ。 だからこそ、余計に画面を通して目に映るこの男が今現在、俺の“恋人”で収まっていることが本当に信じられない。 当然だが、この日の翔琉の左手薬指には俺がプレゼントした安物の指環は無い。 だからこそ、余計にそう感じてしまうのかもしれない。 クリスマスイブに翔琉によって遺された執着の証も、もうそのほとんどが身体から消えている。 「年末年始も仕事で忙しくて逢えそうに無い」と、残念そうな声で告げた翔琉の声ももう朧気だ。 寂しいけれど、それを承知の上で俺は翔琉のことを好きになったんだから……。 自身にそう言い聞かせ、俺は画面の中の翔琉へと密かに胸をときめかせていたのだった。
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