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年明け早々、俺は高校時代からの親友赤羽心織から誘われ、またもや単発のバイトへと出掛けていた。
今回は、現在人気急上昇中だという五人組男性アイドルグループ“エストレジャ”のドームツアーコンサートの設営。
まだデビューして間もないというのに、ドームツアーもチケットが即完売。
毎回コンサートでは、熱狂的なファンが失神してしまう程の盛り上がりを見せるらしい。その為、今回も救急車が裏で待機しているとかいないとか。
例の如く芸能関係には人一倍疎い俺は、会場でそのアイドルのコンサート設営だと知ったミーハーな心織から、グループの熱いレクチャーを受けていた。
だが、元々興味が無い俺にはその説明も左から右へと流れていってしまう。
「えっと、センターが……誰、だっけ?」
「颯斗、覚える気ないだろ?エストレジャのセンターは、トーマだよ!」
「えすと?れじゃー?……と、とーま?誰それ」
呪文の様な名前に、俺は思考が停止する。
「相変わらず、流行り物には疎いなぁ。それより、バイト終わりに一緒に初詣行かない?夜遅くで閉まってるかもしれないけど、賽銭くらい投げられるだろ?」
「――あぁ、いいぜ」
結局、今回のこのコンサートに出演するアイドルの名前を誰一人覚えること無く、俺は設営準備に徹したのであった。
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