目が覚めたら、見知らぬ洋館だった。

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(………あれ??) 桐宮伊織(きりみや いおり)は、見知らぬ洋室のベッドで目を覚ました。 明日から春休みに入るので、午前だけ大学に行き、大学近くのカフェで友人たちとランチを済ませ、少しだけウィンドウショッピングをして、各々帰宅した。 そこまでは覚えている…。その後の記憶がない。 このまま考えたところで、何も思い出さないだろうから、ベッドから立ち上がり、部屋を徘徊する。 中々に広い部屋だと思う。 ベッドのほかには、ソファとテーブル、個室トイレと洗面台、広々とした浴室まである。 どこかのホテルだろうか? 窓の外を見てみると、広大な庭が広がっていた。じゃあ、誰かの屋敷だろう。 (目が覚めて知らない屋敷にいるって………。バ◯オ◯ザ◯ドかよ…。) ガチャっという音がしたので振り返ると、やけに顔の整った、中性的な雰囲気がする男が入ってきた。歳は正直分からない。若そうではあるが……。 「ああ、良かった良かった。やっと目を覚ましたんだ。」 「あのー……。」 「ごめんね、こんなことして。でもこのまま大人しくしてたら、帰してあげるから。だからちょっと協力してね。」 「………。」 状況が読めない今は下手に動かない方がいいだろう。 「喉乾いてない?スリランカの紅茶なんだ〜。」 男の後ろに控えていた使用人らしき女(40代だとは思うが美人)が、お茶の用意を始めた。 「大丈夫、何にも盛ってないから。」 「どうぞ。」 使用人の女の声が優しかったので、伊織は男の向かい側のソファに座る。
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