34人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
(………あれ??)
桐宮伊織(きりみや いおり)は、見知らぬ洋室のベッドで目を覚ました。
明日から春休みに入るので、午前だけ大学に行き、大学近くのカフェで友人たちとランチを済ませ、少しだけウィンドウショッピングをして、各々帰宅した。
そこまでは覚えている…。その後の記憶がない。
このまま考えたところで、何も思い出さないだろうから、ベッドから立ち上がり、部屋を徘徊する。
中々に広い部屋だと思う。
ベッドのほかには、ソファとテーブル、個室トイレと洗面台、広々とした浴室まである。
どこかのホテルだろうか?
窓の外を見てみると、広大な庭が広がっていた。じゃあ、誰かの屋敷だろう。
(目が覚めて知らない屋敷にいるって………。バ◯オ◯ザ◯ドかよ…。)
ガチャっという音がしたので振り返ると、やけに顔の整った、中性的な雰囲気がする男が入ってきた。歳は正直分からない。若そうではあるが……。
「ああ、良かった良かった。やっと目を覚ましたんだ。」
「あのー……。」
「ごめんね、こんなことして。でもこのまま大人しくしてたら、帰してあげるから。だからちょっと協力してね。」
「………。」
状況が読めない今は下手に動かない方がいいだろう。
「喉乾いてない?スリランカの紅茶なんだ〜。」
男の後ろに控えていた使用人らしき女(40代だとは思うが美人)が、お茶の用意を始めた。
「大丈夫、何にも盛ってないから。」
「どうぞ。」
使用人の女の声が優しかったので、伊織は男の向かい側のソファに座る。
最初のコメントを投稿しよう!