目が覚めたら、見知らぬ洋館だった。

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お茶を終えた伊織は、理玖子の案内で屋敷を回っていた。 伊織が居る部屋は屋敷の1番奥にある客間で、2階には篠原の自室や客間、理玖子の自室がある。 1階に降りて、伊織のいる部屋の真下から案内された。スポーツジムかと思うほどの広々としたトレーニングルーム。 トレーニングルームを出ると、書斎、応接室、リビングと食事をするダイニング、その奥のキッチンを案内してくれた。 最後に屋敷の玄関から外に出た。 庭はきちんと手入れがされているようで、芝生は青々と、花は色とりどりと鮮やかだった。 正面の門は西洋風な立派な造りで、威圧感さえ感じられる。 「この屋敷は旦那様の完全なプライベートな空間です。旦那様のお仕事の関係者の方も訪れることはありません。」 「そうなんですか。」 「はい。伊織さん、ご不便をお掛けしますが、ここにいる間はお屋敷を好きに出入りしても構いません。」 「え?いいんですか?篠原さんのプライベートでしょ?」 「旦那様からのお言いつけなので…。屋敷から出さないようにと。その代わり、屋敷内は自由にしていてもらって構わないと…。」 「分かりました。それより…篠原さんって仕事とプライベートをきっちり分ける人なんですね。」 「旦那様は昔からそうですから。」 「あー…ウチのお父さんにも聞かせたい。」 あのワーカーホリック、いつか過労で倒れるんじゃないんだろうか。 「伊織さん、そろそろお夕食の時間です。準備をしますので、お部屋で待っていて下さい。」 「あの、私もお手伝いしていいですか?」 「ですが…。」 「だって…。部屋に戻ってもやることないんだもん。」 理玖子は少し考えてから、何処か諦めたような顔をした。 「今日はビーフシチューにしようと思っているんです。野菜を切っていただけますか?」 「はい!」
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