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日常
“ピピピ…ッ” “ピピピ……ッ” “ピピピ…ッ”
“ピピ”「カチッ」
目覚まし時計の音に目を覚ました黒髪の少年は目をこすりながら時計に目をやる。
時計に表示されている時間は“5:30”
「ん……ちょうどいい時間だ」
部屋に少年のひとりごとが響いた。
ベッドから起き上がった少年の髪は“ふよん”とくせっ毛なことを主張するように動いた。
洗面台に移動した少年は鏡と睨めっこをしながらストレートアイロンを手に持ち、跳ねた髪を押さえてストレートにする。
一区切りがついたのかアイロンを置くと、髪の付け根を見つめ悩ましげな顔をした。
髪の付け根は、目立たないが少し茶色になっていた。
少年はスマホを取り出すとカレンダーを開き、1週間後の休日に“美容院”と打ち込んだ。
スマホを置き、歯ブラシを掴むとミントの歯磨き粉をつけ磨き始める。
鏡にうつる少年は青い瞳で自分と目が合うと、少年は不満気な顔をした。
部屋に戻ると制服に着替え始めた。
着替えが終わり下を見た少年の視線の先には、チャックの開いたスクールバッグがあった。
そのバッグから見えるカメラに触れると少年は嬉しそうに微笑む。
そして、少年はカバンを肩にかけ部屋をでようとして、ふと止まる。
「……あ、カラコン」
そう呟いた少年は洗面台に行き、棚からカラーコンタクトを取り出す。
目の中に入った事を確認すると “パチパチ” と瞬きを繰り返した。
「よしっ」
少年は意気込むと玄関の扉に手をかけ、外に出た。
自分の閉めた扉からオートロックがかかる音とともに隣人である“湖賀鈴兎”と目が合う。
「あ、イツキ。おはよう」
微笑みながら挨拶をする鈴兎はえくぼが際立つ。それがかわいいのだがこの小柄な彼にとってはちょっとした悩みらしい。
「おはよう」
挨拶に応える少年の名は“佐々野五貴”2年生である。
2人は並んで歩き、生徒玄関まで来ると人だかりが見える。
その人だかりに紛れ、空いている場所を探す。
すると…、
「もうすぐお見えになりますよ!」と1人の少年ボイスが言う。
それを聞いた周りの少年らから歓声があがる。
「やったー!」
「たのしみだね」
「今日も間に合ってよかった〜」
「ドキドキするなぁ」と皆口々に言う。
「はやくこないかなぁ」
“佐々野五貴”もその1人だった。
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