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それから、中庭に移動しベンチに腰掛ける水の隣に座る。
水は袋の端をしめると僕に袋の空いた方を差しだしてきた。
(ロシアンルーレット…大丈夫かなぁ)
快適な食後を願い不安げに袋の中へと手を入れるとさらさらした感触の手のひらより少し大きな袋を取りだす。
見るとそれはカレーパンだった。
ほっと息をつく。
「お、運がいいね。それはおじちゃんのオススメパンだぞ」
「変なのを引かなくてよかったよ」
はにかみながら僕が言うと水は袋の中へ顔を逸らしながら手を入れる。
「あ……」
取り出したものを見た水は顔を少し歪ませた。
「今月限定情熱の片思いパンだぁ……」
「なにそれ」
「片思いをイメージしてハート型の米粉パンにいちごのソースと生クリーム、唐辛子もいれて情熱さを、そして日本の素朴さも入れたいからと米粒、そしてたけのこが入ってる。」
そんなものなんで選んだんだろう…。そう思い苦笑いになる。
「えぇ……僕は食べたくはないかな」
「日本好きなのに?」
「洋風感が変に入って意味がわからなくなってるから」
「へー、よくわかんないこだわりだね」
「そうかな」
僕からすればよく分からないセンスだねと思うけど。
「うん」
「あはは…」
僕はこだわりとか無視してもそれを食べたくはないけどね。
パンを2つほど食べると喉に渇きを感じた。そして、飲み物がないことに気付く。
「飲み物なかったね、買ってくるよ。何がいい?」
チラッと横にいる水を見ればまだあの変なパンを食べていた。食べたくないのなら選ばなければいいのに。
「牛乳で」
おそらく、そのパンの味を消したいのだろう。
「珍しいね、それじゃあ行ってくるよ」
少し歩くとすぐに自動販売機を見つかる。
僕は緑茶と牛乳を買い、中庭へ戻ろうとすると 「ねえ」 と声をかけられた。
声のした方を見てみればそこには不良とチャラ男をたして割ったような男がいた。
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