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「……僕のことですか?」
自分を指さし、そう問いかければ
「何言ってんだ、お前しかいないだろ」
そう返されるため心の隅で “別に確認をとっただけじゃん” と少し拗ねる。
だが、ハッと自分の子供らしさに気付く。
「どうされました?」
すこし声が低くなってしまい少し焦る。初対面の相手に失礼だよね……。どう思われたかな。
「世話になったな」
…? 話がいまいち掴めなく、思わず首をかしげてしまった。
「はぁ……。忘れてんのか? お前が仲良くしてる鈴兎のルームメイトだよ」
「鈴兎の……?」
……あ。
「村坂くんか」
「坂村だよ」
「それで祐くんどうしたの」
「拓だよ、お前まじふざけてんな?」
全部間違えていたようだ。
彼は “坂村拓” 鈴兎は1年の最初引っ込み思案をこれでもかというほどに拗らせていた。それを今の状態にまでしたのはこの男のおかげである。
僕も協力はしたがこの男ほど大したことはやっていない。それでも律儀に僕にまでまだこうやって礼を言ったり鈴兎のクラスでの様子をきいたりと心配してくる。
「鈴兎はどうだ?」
「健気に頑張っているよ」
「ならいい」
坂村はそういい、食堂側へと去っていった。
それを見て僕は“過保護だな”と思いながら中庭へと移動をした。
「戻ったよ」
「あぁ、おかえり。少し遅かったね」
「知り合いに会ったから」
「そう、もっと話していていいのに」
空を見ながら水は言った。
水は僕が知り合いの話をすると関わりをすすめるようなことをよく言う。
「いいよ、別に」
だから僕は毎回それを断る。
“誰かと話したいなら昼まで一緒になんていないよ”なんて思いながら。
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