シロ

2/9
前へ
/9ページ
次へ
そういえば、最近1日を通してずっと鳴き続けている。 昨日も主を呼んでいるのか、思えば苦しそうな鳴き声だった。 それは深夜でも早朝でも、ずっと続いていた。 数日続くと、さすがにその家の奥さんが挨拶に来た。 「うちの()が体調悪くて、ずっと鳴いてるんですよ。  主人が触っていると、ちょっと落ち着くんですけど、  夜中まで鳴いてるし、うるさいでしょ。ゴメンなさいネ」 その家の主人は人当たりもよく、快活なおじさんだった。 よくその犬を散歩に連れて行っているのも見かけたし、 視線が合うだけでも会釈してくれるような、やさしい人だった。 動物が好きで、犬だけでなく、怪我をして飛べなくなった野鳥や、 害獣扱いされているハトですら『保護』とうい名目で飼っていた。 その人の家は、常に獣の匂いがしていたけど、 おじさんは気にならないようだった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加