シロ

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それからさらに数日が経つと、その声は聞こえなくなった。 大型犬なので、家の庭で飼っていたのだが、 病院にでも連れて行ったのだろうか。 もしくは人によっては騒音だと認識するものもいるだろうから、 屋内で休ませているのだろうか。 どちらにしても、すこし気がかりではあった。 声がしなくなった次の日、 偶然届け物があったので、わたしはそのおじさんの家を訪れた。 「松永さ~ん、すみませ~ん」 少しだけ玄関を開けて中の様子を伺いながら声をかける。 何の反応もない。出かけているのだろうか。 玄関からまっすぐに伸びる廊下に、大きめの毛布が置いてある。 きっとここで一緒に寝ていたのかもしれないな、と思った。 その毛布は、大人1人分くらい膨らんでいたが、 そこからはどこか濡れたようなシミが広がっていた。
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