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それは、もしかしたら最期を迎えたあの大型犬なのかもしれない。
可哀そうな気もしていたが、もしそうだとするなら、
そのままにしているこの家の主人は、普段の笑顔とは裏腹に、
どこか不気味な雰囲気を醸し出しているように思えた。
今日は気のせいか、獣臭い感じもしない。
急に怖くなったわたしは、
届け物を玄関の上がり口に置くと、逃げるように踵を返した。
全く気付かなかったのだが、
後ろにはおじさんが買物袋を持ち立ち尽くしていた。
『なんだ、健くんじゃないか。何か用だったのかい?』
「あ、あの…コレ回覧です」
『あぁ、ありがとう』
「じゃ、これで…」
『そういえば、うちのシロが迷惑かけたね』
シロ…あぁ、そういえばあの犬、そんな名前だった気がする。
「大丈夫だったんですか」
『…いや、死んだよ』
なんだか急に背後に見える廊下の毛布のふくらみが、
現実に死体なような気がしてきた。
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