解師

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怪は、色んなものの感情が元になっている 人間はもちろん、動物や虫、植物なども怪を作り出す 最近は、野生動物や植物がよく怪を作り出している 人間による自然破壊や、動物に対する虐待、虫には、展示物としての監禁 此岸の生き物には全部感情がある 幽霊は、此岸に強い未練を残していたり、此岸のものに対する恨みによって怪を生み出す 未練解消が出来た幽霊は成仏し、その幽霊が作り出した怪も消滅する だが、未練解消が出来ずに地縛霊となれば、恨みがより強く残り、その分、怪も凶悪性が増す 『サク、出来たで。起きい』 「ん…」 『オムライス』 「食べる」 『ほんま好きやなあ』 「ハルの作るやつ美味しいもん」 『そりゃどうも』 椅子に座り直し、頂きますと手を合わせて食べ出すサク ハルはその横でサクに耳をモフられている 「ハル、明日はあるん?」 『無い』 「よっしゃ。寝たろ」 『あー、でも、言う事あるから来いって言っとったで』 「誰が」 『主が』 「まじかー…」 (あるじ)と言うのは、解師協会のトップである サクは、幼い頃に主に助けられて解師になった ハルは、悪霊が作り出した怪に取り込まれそうになっている所を主に助けられた 主はサクとハルがお気に入りで、度々顔を見せるようにハルに言付けをする 『解者の事や思うんやけどなあ』 「解者はいらん」 『せやけど』 「あんなんもう嫌や」 『サク…』 オムライスを食べ終わり、食器を洗い場に持って行って部屋に入っていった 解者(かいしゃ)というのは、解師の助手の様な者である (おも)に、解師が使う武器の点検や、解師にそれを渡したり、解師の傷の手当をする 解師が持ちながら解く武器の数には限度があり、怪によって使う武器も異なる 1番スタンダードなナイフは、怪と腕1本の距離で解く事になるため、解師の負担が大きい 銃は、使える者が限られていて体力がもう無い時によく使われる だが、命中率は個人差があり、怪の核を撃ち抜かなければ解いたことにならない サクは幼い頃から使っているので、諸々の武器の腕前は一二を争う サクが何故解者を嫌がるのか それは、解者が普通の人間と変わらないからだ 解師や解魔は、怪による影響をあまり受けないが、解者はもろに受ける ある程度の耐性がついても、より強力な怪であればいとも容易く飲み込まれる 怪の種類によって、飲み込まれた後の症状は異なるが、その多くは自害だ 幽霊による怪が1番多い為そうなる 幽霊が作り出す怪 "死んでしまえ"、"殺してやる"、"死ねばいい"、"消えろ"、"死ね" そのどれもが、命が無くなる事を意味している より感情が強い怪は、周りの小さな怪を引き寄せてどんどん巨大化する 万が一、巨大化した怪を放っておくと、その近くで人間が死ぬ だから、解いていくしかない 『ハル、サクはどう?』 『どうもこうも、やっぱりあかんみたい』 『そうか…まあしゃあないか。あれから1回も解者と契約してへんのやろ?』 『うん。いらんいらんの一点張りやから』 『そやろなあ。でも、明日は絶対連れてきてな』 『……頑張るわ』 『ふふ、そやの。頑張れ』 はあ、とため息をついてサクが入った部屋を見つめるハル 晴るるように、と無邪気に笑ってくれたサクには、もう会えない せめて、明日会う解者が変えてくれればいいのに ハルがどれだけ説得しても聞き入れてくれなかった 10年も一緒にいるのに 『ほんまあかんわ、リュウ』 リュウ かつてのサクの解者であり、サクが兄のように慕っていた 今は19歳になるだろう もう5年、サクはリュウの所に行こうとしない 機械に繋がれ、植物のようになった姿が目に焼き付き、いつ目を覚ますか不明だから 目を覚ましても5年間の記憶は無く、サクを認識出来るかが誰にも分からない ハルは時々見に行っていた 何度も何度も呼びかけ、反応してくれなくてもその日あった事を話す サクに気づかれないように サクはまだ16歳 解師を本格的に初めてから学校に行っていないため、サクの世界はいつだってリュウとハルだった 「リュウ…」 寝言で行ってしまう程、会いたい でも、会いたくない
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